「写真集 水俣 MINAMATA」からの抜粋
  写真 W.ユージン・スミス  アイリーンM.スミス  訳 中尾ハジメ


「信じらるっとは

海ばっかったい。

海がきたなかのなんのっち

聞くと、はがいかあ。

うったくってやろごたる。

きたなかちな?

なんさま、きたなかちなんのっち

言わるっと!

悪るかた海じゃなか。

海はおるが命ばい。

海はおるが信心ばい。

海はおるばなぐさめちくるる…

勇気ばださせちくるっし、がまださせちくるる。

陸(おか)んもんのもめごつから

逃らるっとも海たい。

うっ倒(た)るうちしたときでん

手のしびれっかっでん

きかんごつなってかっでん…

とうちゃんもうっ死(ち)んちしとった…村んもんも

妙な目で見るごつなったときでん

海さん行って

泣こごたった。

海がおるが涙ばぬぐうてくれた。

海んこてなれば気ん狂るうごたる。

なしてこげん海ば好くか

だあんも知らん。

海から

見捨てられたこつはなか。

海は

おるが身体んなかば流れよる血いたい。」



チッソ・水俣病
神経組織が変質、萎縮しはじめる。
まず手足と唇のジンジンする感じ及び進行するしびれ。
運動機能はひどくそこなわれ、言葉は不明瞭になり、視野は狭くなる。
発見当初の重症例では患者は無意識になり不随意運動を示すこともあった。
わけもなく叫んだりもした。
死体解剖で脳を見れば、細胞が脱落し海綿状になってしまっている。
水銀は胎盤によって阻まれず胎児にまで達することもわかった。
健康そうに見える母親の場合にも。